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2020年12月 3日

小岩広宣社労士の「人材サービスと労務の視点」49・令和3年度の一般賃金④

Q 労使協定における例外的取り扱いでは、労使で十分に議論を行うことが求められていますが、具体的にはどのような対応が必要ですか。

koiwa1.png 令和3年度において令和2年度の一般賃金を適用するための例外的取り扱いの要件は4点あり、そのうちの1つに「②労使協定を締結した事業所及び当該事業所の特定の職種・地域において、労使協定締結時点で、新型コロナウイルス感染症の感染拡大により、事業活動を示す指標(職種・地域別)が現に影響を受けており、かつ、当該影響が今後も見込まれるものであること等を具体的に示し、労使で十分に議論を行うこと」とあります。

 内容的には、(1)コロナ感染拡大による影響を受けた指標、(2)その影響が今後も見込まれる具体的状況、(3)労使における十分な議論――の3つとなっていますが、ポイントは「労使で十分に議論を行うこと」にあると考えられます。イ事業所全体の事業の縮小状況、ロ事業活動を示す指標の動向、ハ派遣契約数等への影響の見込みの3つの指標などが示されていますが、「例えば、次のイからハまでを用い、議論を行うことが考えられる」とあるように、これらは例示でありすべての内容を必ず労使協定に記載することが求められるわけではないと考えられます。

 大切なのはこれらの具体的な指標を示して「労使で十分に議論を行うこと」であり、②の要件ではそうした労使協議の実態が求められています。したがって、労使協定の締結の前提となる労使協議の方法や経緯、結果の記録などを明確にすることが重要だといえるでしょう。

 通達では、「指標を用いた具体的な影響等を記載することとし、主観的・抽象的な理由のみでは認められないこと」とされています。労使協議では何らかの具体的な指標・資料を示すことが必要となり、事業所の実態や経営状況などに応じて雇用調整助成金の受給状況や事業活動の動向、派遣契約への影響の見込みなどの指標を読み取れる資料などを作成・提示することなどが考えられるでしょう。

 協定締結にあたって事実上「労使で十分な議論」を経ていない場合などは、形式上は労使協定を作成・締結しても、例外的取扱いは無効となると考えられますので、例外的取り扱いの適用にあたっては十分に留意したいものです。


(小岩 広宣/社会保険労務士法人ナデック 代表社員)

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