『天使十則』に要注目
著者・川人 博
岩波書店、定価800円+税
ジュニア新書ながら、ワークルール(労働法)の重要性を訴求する本書の記述は、広く一般の勤労者にも刺さるだろう。
初めに5人の若者の過労自殺をリアルに追い、広告・IT・宇宙工学といった先進分野の職場でも、組織的支援のないまま最前線で高いストレスを蓄積させて自ら命を落とす悲劇が起こりうる現実を紹介している。続いて、5人の中高年勤労者の過労死を詳述し、突然死に至った長時間労働と高ストレスの因果関係を解説している。各背景に、業務の集中、人員不足、トラブル対応,過大な業績期待等を疑い、常にギリギリの状態で業務を回している現場では、1人欠員が出ただけで残された人が過重労働で潰れる構造を分析している。経営のあり方では、タイムカードを改ざんするような職場は遵法精神が麻痺し、粉飾や横領など会計不正へのハードルが下がるとも警告している。
過労自殺した女性の母による痛々しい「啓発授業遺族メッセージ」、高校生たちが話し合い『鬼十則』の反省のうえに作り上げた『天使十則』なる資料も必見だ。
(久島豊樹/HRM Magazine より)