Q 10月に派遣法の労使協定の場合に適用される令和3年度の局長通達が出たと聞きました。コロナの影響を踏まえた例外措置も置かれたといいますが、具体的にはどのような内容でしょうか。
A 厚生労働省は10月21日、労使協定方式の「一般賃金」の水準を定めた職業安定局長通達(同種の業務に従事する一般労働者の賃金水準「令和3年度適用」)を公開しました。局長通達については毎年6~7月に公開されることになっていますが、コロナ禍の影響が雇用・経済を直撃した状況を受けて、秋まで公開を延期することが7月29日に発表されていました。
通達の構成は基本的には令和2年の内容と同様であり、労使協定方式の賃金水準について2年前の統計に従って数値が更新されていますが、「現下の新型コロナウイルス感染症の感染拡大に伴う労働市場への影響等を踏まえた取り扱い」が追加され、コロナ禍の状況を受けた「例外的取扱い」が置かれることになりました。例えば、以下①~④の要件を満たした上で適正な手続きを取った場合には、この「例外」を適用することにより令和2年度の一般賃金に据え置くことが認められます。
① 派遣労働者の雇用維持・確保を図ることを目的とするものであって、その旨を労使協定に明記していること。
② 労使協定を締結した事業所及び当該事業所の特定の職種・地域において、労使協定締結時点で、新型コロナウイルス感染症の感染拡大により、事業活動を示す指標(職種・地域別)が現に影響を受けており、かつ、当該影響が今後も見込まれるものであること等を具体的に示し、労使で十分に議論を行うこと。
イ 「労使協定を締結した事業所において、労使協定締結時点で、雇用調整助成金の要件(事業活動を示す指標が5%以上減少)を満たしていること」など、新型コロナウイルス感染症の感染拡大の影響による事業所全体の事業の縮小状況
ロ 特定の職種・地域におけるこれまでの事業活動を示す指標の動向。
③ 労使協定に、一般賃金の額(令和2年度)を適用する旨及びその理由を明確に記載していること。理由については、①の目的及び②の要件で検討した指標を用いた具体的な影響等を記載することとし、主観的・抽象的な理由のみでは認められないこと。
④ ①の要件に係る派遣労働者の雇用維持・確保を図るために講じる対応策、②の要件に係る事業活動を示す指標の根拠書類及び一般賃金の額 (令和2年度)が適用される協定対象派遣労働者数等を、法第23条第1項及び第2項の規定に基づく事業報告書の提出時に併せて、都道府県労働局に提出すること。
② 労使協定を締結した事業所及び当該事業所の特定の職種・地域において、労使協定締結時点で、新型コロナウイルス感染症の感染拡大により、事業活動を示す指標(職種・地域別)が現に影響を受けており、かつ、当該影響が今後も見込まれるものであること等を具体的に示し、労使で十分に議論を行うこと。
イ 「労使協定を締結した事業所において、労使協定締結時点で、雇用調整助成金の要件(事業活動を示す指標が5%以上減少)を満たしていること」など、新型コロナウイルス感染症の感染拡大の影響による事業所全体の事業の縮小状況
ロ 特定の職種・地域におけるこれまでの事業活動を示す指標の動向。
③ 労使協定に、一般賃金の額(令和2年度)を適用する旨及びその理由を明確に記載していること。理由については、①の目的及び②の要件で検討した指標を用いた具体的な影響等を記載することとし、主観的・抽象的な理由のみでは認められないこと。
④ ①の要件に係る派遣労働者の雇用維持・確保を図るために講じる対応策、②の要件に係る事業活動を示す指標の根拠書類及び一般賃金の額 (令和2年度)が適用される協定対象派遣労働者数等を、法第23条第1項及び第2項の規定に基づく事業報告書の提出時に併せて、都道府県労働局に提出すること。
令和3年度の一般賃金の特例については上記①~④の要件を確実に満たした上で新たな労使協定にこれらの要件を盛り込む必要がありますが、②に「指標を用いた具体的な影響等を記載することとし、主観的・抽象的な理由のみでは認められない」とある点には十分に留意しなければなりません。令和3年度に向けての労使協定の更新・締結にあたっては事前の準備が非常に大切となっていきますので、早期の対応を心がけていきたいものです。
(小岩 広宣/社会保険労務士法人ナデック 代表社員)