毎日新聞が最近、社会面で「ファクト チェック」というコーナーを設けた。これが結構おもしろい。テレビやネットなどで流れた情報の中から、社会的に影響の大きい真偽不明の情報を取り上げ、それがウソかホントか調べて明らかにしているもの。米国の「ポリティ・ファクト」を真似た試みと思われるが、考えさせられる内容が多い。
しみじみ思うのは、新聞が情報を独占してきた時代が完全に過ぎ去り、メディアの多様化が急速に進んでいること。ほんの30年ほど前までは、新聞が自分以外のメディア情報をチェックし、紙面化することなど考えられなかった。それだけ新聞情報が影響力を失い、ネット情報などが幅を利かせているとも考えられる。時代は変わった。しかし、問題はネット情報の信頼性だ。
例えば、昨今何かと話題の日本学術会議が「レジ袋有料化を提唱した」というユーチューバ―によるツイッター情報。ネット上でかなり広がり、一部の学者や評論家もツイートしてバカにしていたが、学術会議が提唱したのは「プラゴミ全体の削減」だった。明白な間違いならともかく、この問題のように一見、紛らわしくて知識人層まで引っ掛かってしまう(彼らの勉強不足も目に余るが)内容になると、誤りがそのまま拡大する可能性が高い。「ファクト チェック」はこれを取り上げて「不正確」とした。
万事この調子で、新コーナーが次に何を取り上げるか興味深い。ニセ情報があふれ返るネットなどをすべてチェックできるわけではないにせよ、一般人が玉石混交のメディア情報の真偽をかぎ分ける「メディア・リテラシー」を高める一助になるのではないだろうか。もっとも、出所不明のネット情報は信用しない、疑って掛かるのが鉄則だが。(本)