コラム記事一覧へ

2020年10月 8日

小岩広宣社労士の「人材サービスと労務の視点」41・派遣労働者に係るテレワークに関するQ&A

Q 派遣労働者のテレワークに関するQ&Aが公表されたと聞きました。具体的にはどのような内容のものですか。

koiwa.png 新型コロナウイルス感染症の拡大は労働者の就業形態にも大きな影響を与え都市部を中心に急速にテレワークが普及しました。この傾向は派遣労働者についても例外ではなく、新型コロナウイルスに関するQ&A(企業の方向け)では、「新型コロナウイルス感染症の感染拡大を防止するためには、テレワークが有効な対策の1つであり、派遣労働者についても、派遣先が自ら雇用する労働者と同様に、積極的なテレワークの活用をお願いいたします」とされています。

 このような流れを受けて、8月26日に厚労省から「派遣労働者に係るテレワークに関するQ&A」が公開されました。派遣労働者がテレワークを実施するにあたっての派遣契約の内容や派遣労働者の労務管理、就業上の留意点などについて9ページに渡って記載されています。具体的な項目は、以下の通りです。

1.契約内容等
2.訪問巡回・住所の把握
3.苦情処理
4.労務管理
5.同一労働同一賃金
6.機器の整備等

 派遣契約には具体的な派遣就業の場所を記載する必要があるため、テレワークを実施する場合には実際に仕事に従事する場所を記載することになります。Q&Aでは必要に応じてテレワークを行う場合、テレワークによる就業を基本とする場合、自宅に準じる場所で就業する場合の3パターンが挙げられていますが、いずれの場合も「派遣労働者の自宅」について具体的な住所を記載することは個人情報保護の観点から望ましくありません。

 派遣元や派遣先が行う就業場所への巡回については、派遣労働者が自宅でテレワークを行う場合には、プライバシーへの配慮の観点から、自宅への巡回に代えて電話やメール、ウェブ面談などで実施することができ、派遣労働者からの苦情処理への対応や助言・指導についても同様です。したがって、派遣労働者本人の同意がない限りは、派遣先からの求めや派遣契約締結時に派遣元が派遣労働者の自宅の住所に関する情報を提供してはなりません。

 また、派遣労働者に対してテレワークに使用する機器などの費用負担を求めることは望ましくなく、そのような場合は十分な話し合いが必要となるほか、就業規則上の根拠や就業条件明示時の説明、派遣契約における規定などが求められることになります。昨今はテレワーク就業時の自宅における実費経費に相当する手当を会社が支給しようという動きもみられますが、今後はそうした対応も検討していく必要があるかもしれません。


(小岩 広宣/社会保険労務士法人ナデック 代表社員)

PAGETOP