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2020年8月18日

【ブック&コラム】『働き方5.0』

人がやるべき仕事を再考するヒント

c200820.jpg著者・落合 陽一
小学館、定価820円+税


 書名は、仮想空間と現実空間の融合を目指す「society5.0」(内閣府)に由来し、人事労務の「働き方」とはほぼ接点がない。著者の体験談を含むテクノロジー・産業史の俯瞰的記述に通底するテーマは「人間がやるべきことの本質は何か」という考察だ。

 人間がコンピューターを道具として活用しているつもりでも、今後コンピューターが「人間の動かし方」を学習し飲み込んでくる可能性は十分あるという前提で、人間的能力を鍛えよと訴える。管理業務もコンピューターが担う社会になればホワイトカラーの価値は下がり、搾取階層が減る分、ブルーカラーの豊かさと平等性は向上すると見通す。ただ、その段階で真に活躍する人材はデジタルへの置き換えができないクリエイティブ・クラス(創造的専門性を持った知的労働者)ではないかと想定し、他者にマネできない価値を検証するための5つの問いを公開している。

 知識量ではWikiに、人脈ではSNSに勝てない構造を説き、「意識(だけ)高い系」の浅い挙動を牽制するなど、"刺激"も提供してくれている。

(久島豊樹/HRM Magazine より)

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