歴史の教訓忘れた?コロナ禍
著者・保阪 正康
講談社現代新書、定価900円+税
我々は過去の歴史から何を学ぶべきか。実証主義の立場から近現代史の分析を続けてきた著者は、本書を通じてこの古くて新しい命題に一定の方向を指し示す。戦前の皇国史観、戦後のマルクス主義的唯物史観を取り上げ、こうした歴史の見方がなぜ誤りなのかを実証している。
「日本がわずか14年で壊滅した理由」、「高度成長は戦争と表裏一体だった」、「戦前の日本はなぜ軍事学を軽視したのか」、「日本のファシズム体制はいかにして形成されたか」などを詳細に分析し、最後に現在進行中の「新型コロナはファシズムを呼ぶか」というテーマにも触れている。
面白いのは、明治初期の近代化の過程、中期の軍事路線化、後期の帝国主義の潮流に組み込まれる過程、戦争への14年など、日本史の大きな流れが「14~15年周期」で起きたという指摘。さらに、それが戦後も続いて、高度経済成長も14年周期だったと分析していることだ。その当否はともかく、何か法則性があるようにも感じられて興味深い。
最終章では新型コロナについて、「スペイン風邪」との戦いから学ぶべき教訓を解説。新型コロナとの戦いを「戦争」ととらえ、こうした非常時には歴史に培われた大局観が不可欠と述べ、現首相にはそれがないと断じている。やや強引な感じもするが、これまで政府が実施してきた一連の対策のどさくさぶりを見れば、大いに説得力があることも確かだ。(俊)