選挙運動のウグイス嬢への過分報酬に端を発した河井克行・案里夫妻の選挙違反事件は、広島の地元政界を巻き込んだ大規模な買収事件に発展。市長、町長、県議、市議が次々と「金をもらった」とメディアの前で"自白"する「告白ドミノ」現象に至った。
告白スタイルも坊主頭あり、泣き落としあり、「預かっただけ」「返すつもりだった」との苦しい弁解ありで、思わず笑っちゃう。大のオジサンたち(オバサンもいたかな)の慣れないパフォーマンスは見ていて飽きない。この人たちは週刊誌の一報がなければ何食わぬ顔でだんまりを決め込んだはず。「うそつきは泥棒の始まり」という古いことわざを知らないのかな。
引責辞任した首長の中には、出直し選挙にまた立候補しそうな人もいるという。「深く反省している」などと神妙に訴え、首尾よく当選できれば「ミソギは済んだ」とばかりに、事件などなかったことにしてしまうのだろう。人間だから間違いはあるにしても、分別のある大人の間違いは具体的な反省を約束・実行できなければ、出馬自体が選挙制度を汚すものではないか。もっとも、それほどの覚悟を持ち合わせていれば、買収などされなかったはずだが。
もう一つ、不思議に思うのは、広島県警の捜査。統一地方選や参院選では県警内に必ず「選挙違反取締本部」なる特別班を設置して、選挙違反に厳しい監視の目を向ける。検察に比べれば、各警察署から交番に至るまで豊富な人員と情報網を抱えているはず。にもかかわらず、これだけ大規模な違反を見逃してしまった。取締本部など、形式だけのものなのか。警察の沽券(こけん)に関わる話だと思うのだが。(間)