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2020年7月 2日

小岩広宣社労士の「人材サービスと労務の視点」27・新型コロナウイルスの雇用調整助成金の特例措置⑨

Q 雇用調整助成金は、中小企業の場合、「解雇等を行わない場合」は10/10の支給率となりましたが、「解雇等を行わない場合」とは具体的にはどのような場合でしょうか。

koiwa.png 新型コロナウイルス感染症の特例措置の雇用調整助成金は、中小企業の場合、休業手当相当額の原則4/5、解雇等を行わない場合10/10が助成されます。「解雇等を行わない場合」のことを「雇用維持要件」といいますが、単純に解雇者を出していない場合とは異なりますので、注意する必要があります。雇用維持要件とは、次の2点のことをいいます(雇用調整助成金支給要領)。

1 判定基礎期間の末日において、特例事業主に雇用されている労働者(雇用保険未加入者を含む)及び派遣労働者として当該事業主の事業所に役務の提供を行っている者(以下「事業所労働者」という。)の数が、令和2年1月24日から判定基礎期間の末日まで(以下、「比較期間」という。)の各月末の事業所労働者数の平均の5分の4以上であること。但し、業界特有の理由等により、例年特定の季節において事業所労働者の数の増減がやむえない事情等である場合には、要件を満たすものとすることができる。

2 比較期間中に、次に掲げる解雇等を行わないこと。
なお、以下については、新型コロナウイルス感染症を理由とする解雇等も含むことに留意すること。
① 事業主に直接雇用される期間の定めのない労働契約を締結する労働者の場合、事業主都合による解雇により離職をさせること
② 事業主に直接雇用される期間の定めのある労働契約を締結する労働者の場合、解雇と見なされる労働者の雇止め、事業主都合による中途契約解除となる離職をさせること
③ 対象事業主の事業所に役務の提供を行っている派遣労働者の場合、労働者派遣契約期間満了前の事業主都合による契約解除

 解雇や雇い止めがあってはならないという2つめの要件は理解しやすいですが、1の要件があることを知らない人は多いと思います。こちらは、事業所の労働者数(雇用保険未加入者や派遣労働者を含む)が、令和2年1月24日から5分の4以上である必要があるというものです。

 「業界特有の理由等により、例年特定の季節において事業所労働者の数の増減がやむえない事情等である場合」の例外は認められますが、要件を満たさないと助成金の対象とはなりませんので、しっかり確認したいものです。

 2の要件については、当然のことですが派遣労働者の事業主都合による派遣契約期間満了前の契約解除も対象となりますので、あわせて注意しましょう。


(小岩 広宣/社会保険労務士法人ナデック 代表社員)

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