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2020年6月 2日

【ブック&コラム】『本屋を守れ~読書とは国力』

活字離れ、本離れに強い警告

c200602.jpg著者・藤原 正彦
PHP新書、定価900円+税


 日本の子供たちの「活字離れ」「本離れ」が叫ばれて久しい。このまま行くと、どうなってしまうのか。著者は強い危機感から「国語力こそが国力」の信念に基づき、紙の書籍の復権とその供給源である「書店を守れ」と強調する。

 本書は「国語力なくして国力なし」から「国家を瓦解させる移民政策」まで、8章構成のインタビュー形式。日本の子供たちの読解力が急落している現実を嘆き、その原因をパソコン、スマホの隆盛に求める。なぜなら、「インターネットは教養にならない」からであり、「ITを教育現場で活用してはいけない」という。

 というのも、ネット情報はしょせん「情報」に過ぎず、それを「知識」や「教養」にまで高めないと使い物にならないが、ネットに依存する限り、3者は孤立したままであり、有機的につなげるには本を読むしかない。その点では、デジタル本も記憶に残らず、本棚を眺めて思索するということがない。読解力の低落は、ここに根本原因があるというわけだ。

 ひいては、教養がないと大局観が生まれず、それがグローバリズムの暴走を招いているという。著者の熱弁は読書から世界政治にまで広がり、突き詰めると「哲人政治の理想」に行きつくと思われる。歴史解釈や政治観には賛否がありそうだが、「読書こそ第一」と強調する著者の信念には大いにうなずける。(俊)

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