復職を諦めた中高年103万人の危機
著者・NHKスペシャル取材班
NHK出版、定価800円+税
総務省から発表される「失業率」は、求職中なのに就職できていない人が対象であって、"働くことを諦めてしまった人"はカウントされない。本書は、その統計に表れない「ミッシング・ワーカー」の存在に着目し、特に40代・50代の実態を取材ベースで探っている。
登場する取材対象者はいずれも親の介護をきっかけに離職し、介護が終わっても社会復帰の機会を失い、自身の生活を危機にさらしているケースがほとんどだ。自宅介護の様子、節約生活の実情は相当に痛ましく、セルフ・ネグレクトに陥り「ゴミ屋敷」に閉じこもる姿までも生々しくレポートしている。1997年から20年間、40代・50代の人口は減少しているのに、ミッシング・ワーカーは増加傾向にあるとし、その数を103万人と推定。「働き盛り」「大黒柱」を担う層ゆえ、福祉や社会保障のセイフティーネットの対象からは漏れている危うさも描かれている。
個々人の生き方の追跡に併行して、孤立した状態から労働市場に戻ってこられる仕組み作りが急務ではないかと切迫した課題を問いかけている。
(久島豊樹/HRM Magazine より)