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2020年4月21日

【ブック&コラム】新型コロナ、加速する不寛容

 こういう世情になると、人間の本性がむき出しの形で出て来がちだ。新型コロナウイルスの感染拡大が止まらず、メディアの報道はコロナ一色。外出の自粛、企業の休業、学校の休校など、多くの国民が感染におびえながら日常生活を制限され、社会全体に出口のない不安や不満がうっ積する。

c200421.jpg 愛知県では、休業中の男性が「世の中に恨みがある」として、神社などに放火したという報道を目にした。同様な不審火がこのところ各地で相次いでいるという。行き場のない不満のはけ口を晴らすつもりなのだろうが、それで晴れるとも思えない。残るは後悔だけだろう。

 こうした短絡的な犯罪以上に問題なのは、感染治療の最前線に立つ医療従事者やその家族らに対する世間の無知、無理解だ。勤務先の病院で感染者が出た看護師の場合、本人や家族まで感染が疑われ、子供の保育園に登園拒否されるなど、まるでバイ菌扱いされるとの報道にも接した。おそらく、他の保護者からわが身可愛さによる"要望"があり、それを園側も受け入れたと思われるが、それで「安心」などできるのだろうか。

 同様なことは東日本大震災当時にもあった。他県に避難した原発付近の住民に「放射能がうつる」「賠償金をもらっただろう」といった悪口を浴びせ、東京電力社員の家族に対するいじめも横行した。社会全体に不安や不満が広がると、より立場の弱い人をからかったり、いじめたりする光景が増えがちだ。被害者がどれほど傷つくかという、ちょっとした想像力さえ働かなくなる「いじめ社会」にいつの間にか染まってしまう。「寛容」や「思いやり」が今ほど必要な時はない、にもかかわらず。(俊)

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