日本の組織に共通する弱点を指摘
著者・榎本 博明
ワニブックス、定価830円+税
アメフト部、ボクシング連盟、体操協会等にみられた諸事件には、政治・行政・学校・企業など他の組織にも共通する病理があるとの仮説を立て、著者は、体育会系の人材と組織を心理学の視点から考察していく。
まず、人材の特徴では、"挨拶ができ、仲間を大切にし、我慢強く、協調性を発揮し、集団行動に適合する"という、企業の採用基準に親和性の高いメリットを挙げる。一方で、"考えずに行動し、融通が利かず、認知的複雑性が低い(敵・味方をつけたがる単細胞)"といった弱点も整理。自信を持ち活動的で外向性が高いのは、内面を振り返る時間がなく、悩んだり劣等感を抱いたりする経験がなかったゆえではないかと分析している。組織が病んでしまう理由では、上意下達による思考停止、下位者の忖度が招く上位者の権力志向の拡大といった構造に注目し、一体感の強さが異質の排除と裏表の関係となって、柔軟な軌道修正を難しくしていると指摘する。
最終章では、体育会系組織になじめない読者に向けてスマートな対処法を伝授してくれている。
(久島豊樹/HRM Magazine より)