冬も終わろうという東京・新宿御苑を散策した。まだいくぶん肌寒く、多くの広葉樹は葉を落としたまま。サクラも例に漏れず、あちこちに老木がたたずんでいた。その姿はお世辞にも美しいとは言えない。硬い幹はよじれて汚れ、所々がコブのように膨らみ、お年寄りには申し訳ないが、どこか老醜のようなものを感じさせる。
しかし、よく見ると枝の蕾はことごとく膨らんでおり、この幹が冬の間に地中の栄養分を吸い上げ、枝の先まで届けていることがわかる。もう半月もすれば花の季節となり、花見客が大挙して押し掛けるだろう。大半の人々は満開のサクラを楽しみこそすれ、花に隠れた幹など見向きもしないはずだ。高齢樹の"哀しみ"を感じてしまう。
人間たちはそうして咲いた花をめでるのだが、単にめでるだけではなく、自らのPRにちゃっかり使う種族もいる。とりわけ政治家にとって、満開の花の下で多くの人々の祝福を受けるのは「人生の春」そのものなのかもしれない。だから、来てくれる人は、多ければ多いほどよい。そのための費用など、自分の金でなくても使い放題......。
そんな裏方の事情がバレてしまい、マスコミや野党のしつこい追及を受けてムリな釈明に追われる政治家の姿は、まさに長期政権の"老醜"を晒しているようにみえる。さっき、サクラの幹には申し訳ないことを言ってしまった。(俊)