「是々非々」忘れた?マスコミ
著者・飯田 浩司
新潮新書、定価760円+税
大手マスコミに対する社会の受け止め方は、ずいぶん変わってきた。インターネットの発達でSNSが日常生活のコミュニケーションの道具となってから、マスコミの情報独占が崩れたことが大きな背景になっている。同時に、マスコミが掲げる「権力の監視」機能に対しても、疑いの目が向いているのだ。
本書はそれを強く意識しながら、マスコミの報道姿勢と現場のギャップが拡大している事実を突きつける体験的報道論だ。著者は民法ラジオアナウンサーというマスコミ側の一員でありながら、現場取材を通した強い問題意識を投げ掛けている。
米軍基地問題、安全保障、福島原発事故、金融緩和、加計学園問題など、大きなニュースとなってさまざまな意見が飛び交うこれらのテーマについて、取材に基づいた独自の目線で論じる。不発弾処理に追われる沖縄自衛隊員や、ドローン先進地帯となった福島など、通常のマスコミ報道ではほとんど目にしない、キラリとした視点が光る。
結局、「権力か反権力か」といったたぐいの二分法の発想が、もはや時代遅れになっており、その中間もあるというのが事実。「イメージ先行の報道は危険」など、考えてみれば当たり前のことばかりだが、それができていないところに現代のマスコミの病理がひそんでいるのかもしれない。(俊)