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2020年1月 9日

小岩広宣社労士の「人材サービスと労務の視点」2・比較対象労働者と派遣先の同一労働同一賃金

Q 改正派遣法に基づいて派遣先が比較対象労働者として短時間・有期雇用労働者を選出する場合、中小企業の派遣先においても、2020年4月から派遣先内における均衡待遇の確保などに取り組む必要があると聞きました。具体的にはどういうことでしょうか。

koiwa1.png 「比較対象労働者」とは、派遣先に雇用される通常の労働者であって、その業務の内容及び業務に伴う責任の程度(「職務の内容」)並びに職務の内容及び配置の変更の範囲が、派遣労働者と同一であると見込まれるものその他の当該派遣労働者と待遇を比較すべき労働者のことをいい、具体的には以下に該当する者をいいます。

①「職務の内容」と「職務の内容・配置の変更の範囲」が同じ通常の労働者
②「職務の内容」が同じ通常の労働者
③「業務の内容」又は「責任の程度」が同じ通常の労働者
④「職務の内容・配置の変更の範囲」が同じ通常の労働者
⑤ ①~④に相当する短時間・有期雇用労働者
⑥派遣労働者と同一の職務に従事させるために新たに通常の労働者を雇い入れたと仮定した場合における当該労働者 


 これらのうち、派遣先が⑤や⑥を比較対象労働者として選定した場合には、派遣元から求めに応じて、「派遣先は、派遣元事業主による派遣労働者の均等・均衡待遇の確保や比較対象労働者との間の待遇の相違の内容及び理由等の説明が適切になされるようにするため、それぞれの根拠について情報提供することが求められる」とされています(業務取扱要領、2020年4月1日施行版280頁)。

 パートタイム・有期雇用労働法では、パートタイマーや有期雇用労働者の同一労働同一賃金については、大企業は2020年4月、中小企業は翌2021年4月から施行されますが、上記の場合には中小企業であっても2020年4月から派遣先内における均衡待遇の確保が求められることになります。この点はあまり触れられていませんが、逆説的には労使協定方式を選択する要素として一定の影響があるかもしれません。

 

(小岩 広宣/社会保険労務士法人ナデック 代表社員)

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