来年は、いよいよ東京オリンピック・パラリンピック。都内の役所などには、あちこちにカウントダウンを示すポスターが掲示されている=写真。すでに各種目の五輪選考会などが盛んに開かれ、代表入りした選手や漏れた選手の悲喜こもごもの表情がテレビに映し出されると、見ているこちらもカウントダウンの気分になる。
以前から気になっていたのだが、日本人選手は勝っても負けても涙を流す人が多いようだ。勝った選手は嬉し涙、負けた選手は悔し涙というわけだが、それが行き過ぎると違和感も覚える。「勝者は敗者をいたわり、敗者は勝者を称える」のがスポーツの常識だと思うからだ。高校生の大会などで、負けた選手が周囲もはばからず泣きじゃくる姿をみていると、「指導者は何を教えてきたのだろうか」と首を傾げてしまう。
それを強く感じるようになったのは、今秋のラグビーWCだ。試合後、対戦チーム同士が握手を交わし、退場時には花道を作って拍手で送り合う光景が強く印象に残り、「これがノーサイドというものか」と感銘を受けた。選手たちが「大人」であり、それがラグビー界の慣例だから、自然にできるという意味合いもあるだろう。しかし、つい数分前まで激しいぶつかり合いをしていた選手たちが、お互いを称え合う姿は美しかった。試合の後で、いろいろな問題が起きたことを差し引いても、である。
オリンピック・パラリンピックでも、選手たち、とりわけ涙もろい日本人の皆さんは「ノーサイド精神」を励行してもらえないだろうか。泣くのは控え室に戻ってからで結構。少なくとも競技場にいる間は、勝っても負けても胸を張って結果を受け入れてほしい。もっとも、日本のメディアは“お涙ちょうだい”式の取材やインタビューが多いから、やはり泣いてしまう選手が多いかもしれない。で、それを見る私も、ついホロリ……。「ノーサイド」はむずかしいのかな。(俊)