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2019年12月 5日

中宮伸二郎社労士の「労務の心得」49・パート有期法と有期雇用派遣社員

Q 有期雇用派遣社員の待遇は、派遣法だけではなく、パート有期法も適用されるとのことですが具体的にどのようなことに気を付ければよいでしょうか。

nakamiya03.png 有期雇用派遣社員は、派遣法だけではなくパート有期法の対象にもなります。パート有期法の比較対象労働者は派遣元の無期フルタイム社員(営業職等の社員)です。派遣社員と無期フルタイム社員の職務内容、人事異動の範囲が同じであれば、均等待遇、異なる場合は均衡待遇が求められています。

 例えば、労使協定方式で待遇を決定する場合、通勤手当について時給に含まれているとするのであれば、一般通勤手当1時間72円以上が時給に含まれていれば通勤手当を支払っていることになります。しかし、派遣元無期フルタイム社員に通勤手当が実費支給されている場合、有期雇用派遣社員に対する通勤手当が実費支給ではないことが不合理ではないことが求められます。必ずしも派遣社員の通勤手当を実費支給にしなければならないものではありませんが、不合理ではない理由があるかどうか大変難しいところです。

 改正派遣法に対応するために派遣社員の待遇を検討する際には、派遣元無期フルタイム社員との待遇差も同時に検討しなければなりません。特に業務との関連性が低い諸手当(家族手当、住宅手当等)について相違を設ける場合は、その理由が不合理ではないかどうか検証が必要です。また、賃金以外の待遇も検証してください。

 例えば、派遣元の営業職社員等の定期健康診断は、就業時間中に実施され、健康診断に要した時間の賃金が控除されることがないことに対して、派遣社員は自身の休日に健康診断を受けるという取り扱いについて、同一労働同一賃金ガイドラインでは、定期健康診断受診時の勤務免除も同等に取り扱うことを推奨しています。

 なお、パート有期法の不合理労働条件禁止は、労使協定方式を採用している場合だけではなく、派遣先均衡均等方式を採用している場合にも求められることにも注意が必要です。

 

(中宮 伸二郎/社会保険労務士法人ユアサイド 代表社員)

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