Q 無期雇用派遣社員には、既に中小企業退職金共済制度(中退共)を活用して退職金制度を設けていますが、拠出額が一般賃金の6%未満となっています。このような場合、拠出金の増額以外に対応方法はないでしょうか。
A 拠出金を6%以上とすることの他に不足分を前払い退職金として支給する方法、退職金制度を整えて中退共から支給される退職金を制度の一部とする方法が考えられます。既に利用している中退共を解約し、異なる退職手当制度を設けることは不利益変更にならないよう十分な配慮が必要となることから、これまでの拠出金を活かして派遣法改正に対応する方が良いと思います。
退職手当について、中退共を利用する場合は、一般賃金の6%以上を拠出することとされていますが、前払い退職金との併用も認められています。例えば、月次給与25万円の派遣社員について、中退金の掛金だけで退職手当をまかなう場合、25万円の6%、1万5000円を掛金として拠出しなければなりませんが、既存の中退共の掛金月額が7千円の場合、差額の8000円を前払い退職手当として支給することで、二つの方式を合わせて6%以上の制度を設けていることとなります。
また、退職金制度を設けて、中退共を退職金の保全措置と位置付けることも可能です。例えば、「平成30年中小企業の賃金・退職金事情(東京都)」を比較対象として退職金制度を以下のように定めた場合、月次給与25万円の派遣社員の中退共の掛金月額が7000円のままで、退職金のほとんどをまかなうことが可能です。
1年以上3年未満 | 3年以上5年未満 | 5年以上10年未満 | 10年以上15年未満 | 15年以上25年未満 | 25年以上 | |
自己都合 | 0.4 | 1.0 | 3.0 | 7.0 | 10.0 | 16.0 |
会社都合 | 1.0 | 2.0 | 5.0 | 9.0 | 12.0 | 18.0 |
計算例:勤続3年で自己都合退職の場合、36ケ月×7千円=25万2000円
※実際は、3年の間に昇給する可能性が高いため、退職時の月次給与は25万円より高くなっています。そのため、上記試算では退職金全額をまかなうことはできないと予想されます。
(中宮 伸二郎/社会保険労務士法人ユアサイド 代表社員)