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2019年10月17日

中宮伸二郎社労士の「労務の心得」42・通勤手当、退職手当を時給に含める場合の割増賃金

Q 通勤手当、退職手当を時給に含める取り扱いをする場合、割増賃金の計算に含めなければならないのでしょうか。

nakamiya03.png 時給に諸手当を含める場合、諸手当を含めて割増賃金を計算しなければなりません。割増賃金の計算から除外できる諸手当は、家族手当・通勤手当・別居手当・子女教育手当・臨時に支払われた賃金(慶弔見舞金等)・1カ月を超える期間ごとに支払われる賃金(賞与等)・住宅手当に限定されています。

 前払い支給の退職手当は、上記の除外できる諸手当に含まれないため、割増賃金の対象となります。通勤手当は、除外できる手当に含まれていますが、通勤手当の名称で支給されている賃金の全てを除外できるものではありません。

 通勤手当が、通勤に要した費用に応じて支給される手当である場合には、除外することができるものです。一方、実際の通勤距離にかかわらず1時間につき72円支給する場合など、通勤に要した費用や通勤距離に関係なく一律に支給する手当である場合には、除外することはできません。

 賃金を「基本給:時給1300円(通勤手当を含む)」と定めている場合、通勤手当を含めて割増賃金の対象となります。1時間につき72円の通勤手当を別項目で支給する場合、実費の範囲で割増賃金の対象外とすることができますが、給与計算がとても煩雑になります。

 徒歩通勤実費0円の場合、通勤手当全額が割増賃金の対象となります。所定労働時間7時間、1日の通勤手当額504円、通勤に要するバス代420円の場合、420円を割増賃金の対象から除外することは可能ですが、差額84円は割増賃金の対象となります。

 なお、非課税となる交通費の取り扱いも電車、バスなどの交通機関を利用する場合は、その運賃が非課税対象となるため、上記例では84円を課税交通費として取り扱うことになります。

 

(中宮 伸二郎/社会保険労務士法人ユアサイド 代表社員) 

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