残業できない時代の働き方とは
著者・新井健一
日本経済新聞出版社、定価850円+税
書名の「働かない技術」とは、お調子者の職場遊泳術などではなく、真面目なマネジャーが余裕を確保するための覚悟と知恵という程度に理解しておくとしっくりするだろう。
長時間労働やパワハラ体質に頼った組織マネジメントが通じない今後、勤労者のキャリアは大きく2方向に分かれると著者は予測する。1つは「役割給人材」で、自らは仕事を抱えず、メンバーを育成支援していくプロ。もう1つは「職務給人材」で、担当ポストの範囲内で自ら専門性を発揮するプロ。両者とも時間を犠牲にして何とか奮闘するような働き方では“含み損人材”に転落すると警戒し、その先に求められる新しいマネジャーの姿を模索している。また、組織全体の効率・生産性という点でも、全員の多能工化ではなく2方向のキャリア分離が最も合理的だと説き、残業ができない時代の1つの解を示している。
内容は一貫して論理的ながら構成は必ずしも直線的ではなく、友人の悩み、会議の無駄、「徳」の概念まで幅広いトピックを行きつ戻りつ考察を進め、“味わい”もにじむ。
(久島豊樹/HRM Magazine より)