いよいよ10月から消費税が8%から10%に引き上げられる。将来世代にツケを回さない財政健全化を唱える「やむなし派」と、消費マインドの低下を含む経済への影響などを指摘する「反対派」が、実施1カ月を切った今もそれぞれの専門的かつ多面的な分析から意見をぶつけ合っている。消費税のことを指す「大型間接税」の導入が初めて打ち出された1979年の大平正芳内閣の時代から、政治案件の本丸として曲折をたどってきた。筆者は今回の2%アップに対して概ね容認しているが、新しく導入される軽減税率の運用に「問題あり」と感じているひとりだ。
国税庁や政府広報によると、軽減税率は「酒類を除く飲食料品。外食は含まない」「定期購読契約が締結された週2回以上発行される新聞」の2つについて、現行の8%を維持するという制度。目的を端的に言うと「低所得者の負担軽減」だという。前者の飲食料品の線引きとイートイン・テイクアウトなどの課題は、スタート直後の混乱ぶりを新聞・テレビを代表するマスコミが騒ぎ立てるだろう。しかし、いつの時代も為政者である御上(おかみ)の無理難題や未整備な部分について、庶民は知恵を絞って円滑に運用してきた“経験”がある。また、どうしてもおかしな点は、所管官庁が修正してくるだろうからあまり心配していない。
解せないのは、後者の「新聞」が軽減税率の対象にねじ込まれている点だ。日本新聞協会が発表している新聞発行部数によると、2918年10月時点では4000万部の大台を割り込み、ピークの1997年から25%も減少している。他の民間の調査会社や関係者とされる複数の人たちによる内部告発などでは、発行部数より購読部数に着目してかなりシビアな部数を示している実態も側聞する。
軽減税率の対象となる「新聞」の定義を「政治、経済、社会、文化等に関する一般的社会事実を掲載する週2回以上発行される新聞に限る」とし、週に1回、月に1回しか発行されない新聞を特殊として対象にしていない。新聞業界の中でも、発言力の強い人たちが政府筋とかけ合って“線引き”したのかなあ、と邪推してしまう。「低所得者の負担軽減」という最大の目的に照らしても、あるいは新聞業界がどう強弁しようとも、一般生活で必需とされていなくなっているのは周知の事実だ。この軽減税率の制度には「適用期限」がない。せめて、軽減税率の恩恵を受ける新聞業界から「現在の部数が1割減少したら対象から外してください」という堂々たる宣言が聞きたい。(司)