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2019年8月22日

中宮伸二郎社労士の「労務の心得」34・労使協定方式の派遣先情報提供

Q 労使協定方式で待遇を決定する場合でも、労働者派遣契約(個別契約)締結前の派遣先の情報提供を受ける必要はありますか。

 派遣先均等・均衡方式、労使協定方式のいずれの場合でも、派遣先の情報提供を受けなければなりません。ただし、派遣個別契約に派遣社員を協定対象労働者に限定することを定めている場合は、提供を受ける情報が以下の2項目に限定されます。 

① 派遣先が派遣社員と同種の業務に従事する派遣先に雇用される労働者に対して行う業務の遂行に必要な能力を付与するための教育訓練の内容(当該教育訓練がない場合、その旨)
②給食施設、休憩室、更衣室の内容
 利用機会の付与の有無、利用時間等具体的な内容(当該施設がない場合、その旨)

 
nakamiya03.png 労使協定方式では、賃金以外の待遇に関して派遣先との均等・均衡が求められますが、上記①、②に関しては、派遣先における待遇となることから、派遣先と合わせなければならないため、情報提供を受ける必要があります。同時にこの2項目は、2020年4月改正により、配慮義務から義務に格上げされる項目でもあります。

 ① に関し、派遣社員が以前同業他社に勤務し、当該教育訓練と同様の内容の教育訓練を受講している場合など職務の遂行に必要な知識や技術を身に付けている場合を除き、派遣先は、必要な能力を付与するための教育訓練を実施することが求められています。

 ②に関し、派遣先は、派遣先の労働者に利用の機会を与えている給食施設、休憩室、更衣室は、派遣社員にも利用の機会を与えることとされています。義務といっても派遣受け入れのためにこれまでなかった給食施設を設置することまでは求めておりません。派遣先の正社員が利用している施設(給食施設、休憩室、更衣室)について同じように利用できるようにすることが求められています。

 派遣個別契約で派遣社員を協定対象派遣労働者に限定する場合、比較対象労働者に関して提供を受ける必要がなくなりますが、教育訓練の内容は職種によって異なることが想定され、また、更衣室も職種によって利用の可否が分かれることもあると思います。そのため、比較対象労働者を選定する必要はありませんが、派遣先には、必要に応じて同種の業務に従事する者を想定して情報提供をしていただくことがあるかもしれません。
 

(中宮 伸二郎/社会保険労務士法人ユアサイド 代表社員)

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