70歳まで働けるように、国は来年にも「高年齢者雇用安定法」を改正するようだ。年金支給を60歳から65歳に1歳ずつ引き上げた際に、企業に65歳までの雇用を義務付けた法律で、今回は年金の70歳支給開始を念頭に置いたかのような動きだ。40代後半の筆者にとっては、「またもルール変更でゴールが遠のいた」という気分だ。
もちろん、こうした流れを予期していなかったわけではない。社会人になった25年前には、すでに超高齢化社会の到来が指摘されていた。当時、50代半ばの上司たちに「君らが60歳になる時に年金はあるかねえ。ずっと働かないとダメだね」と、冗談とも本気ともつかない言葉を浴びせられたものだ。60歳定年が当然という時代だっただけに、あまり深刻にとらえることなく「多分そうですね」とのん気に返答していたが、本当に職業人生の終わりは60歳でなくなったようだ。
国は65歳から70歳まで働けるように、法改正で企業に「定年を廃止する」「定年を延ばす」「定年後にまた雇う」――を促すほか、「別の会社に再就職させる」「独立して稼げるようにする」「起業を助ける」「社会貢献活動への参加を支える」――といった7案を求める模様だ。最近、名だたる企業が相次いで45歳以上の希望退職を募っている中、法律で縛って何とかなる話なのだろうかと首をかしげてしまいたくもなる。
70歳まで働ける社会に、周りの意見は三者三様だ。「家に居ても座りが悪い。このまま会社に残りたい」「同じ顔を見続けるのはムリ。別な会社なら」「60歳で勘弁。身体が持たない」――など、バラバラの考えなのだが、どれもうなずけるものばかり。無事であれば、筆者は22年後に70歳を迎えることになるが、逆算して人生設計するのはまだ早いかも。それまでに「ルール変更」でゴールが再び遠のくことがありそうで怖い。 (司)