2008年にスタートした寄付制度の「ふるさと納税」が、6月から変わる。改正地方税法に伴い、総務大臣が基準を守ると見込んだ自治体のみ、制度の対象として指定するという。国から「ルール逸脱」の判断を下されて指定の対象外になると、制度に基づく税制優遇は受けられない。節税対策と過度な見返りだけを期待する輩(やから)と、その心理を突いて度を超えた寄付金集めに走った自治体に「ストップ」がかかった訳だ。
約10年かけて浸透してきた「ふるさと納税」。東北の田舎で生まれ育ち、今では東京暮らしが長くなった筆者には郷愁をそそられる響きだが、導入時の狙いはどんなものだったのだろう。総務省は、「納税者が寄附先を選択でき、税に対する意識が高まる」「生まれ故郷をはじめ、お世話になった地域や応援したい地域へも力になれる」「自治体が国民に取り組みをアピールすることでふるさと納税を呼びかけ、自治体間の競争が進む」――の3つを大きな理由に挙げている。
なるほど、「三方良し」の仕組みだ。ところが、寄付のお礼にあたる返礼品の割合や中身について、一部自治体の“行き過ぎ”が問題となっていた。約9割の自治体が返礼品を実施しているが、中にはおよそ「ふるさと」「ご当地」とはかけ離れた類いの品も散見された。歯止めをかけるため、6月以降は地場産品に限定し、かつ過大な経費をかけたり、派手な広報をしたりして寄付を集めることは違反となるようだ。
「ふるさと納税」の理念に賛同するひとりだっただけに、制度そのものが廃止に追い込まれかかったことには安堵している。今回の見直しに至るまでの一連の経過を見ていて、返礼できる地場産品が見当たらない市町村の“言い分”も理解できなくはない。海の幸や山の幸、地場の特産品が豊富な自治体とどうやって自治体間競争をすれば良いのか。ちょっと待てよ。そう言えば、そもそも制度導入の段階で返礼品は主役でないはず。寄付をする側も、返礼品ありきから少し引いて、自治体の政策や取り組みを応援していく本来の「ふるさと納税」に近づいたと受け止めてみてはどうだろう。 (博)