19年度一般会計予算が衆議院で可決し、年度内成立が決まった。総額は初めて100兆円の大台を超え、101兆4571億円に上る。筆者が社会人になった25年前、国の当初予算は約70兆円だった。当時、すでに「財政健全化」という言葉は一般化しており、借金である国債発行の問題も常に議論の対象となってきたが、気が付けば総額の3分の1を新規国債発行で賄う形が常態化している。
それでも、新年度予算について麻生太郎財務相は「経済再生と財政健全化を両立する予算ができた」と強調する。主な理由のひとつは、国債の新規発行額を前年の当初予算に比べて約1兆円少ない32兆円ほどにとどめたこと。もうひとつは、税収がバブル景気のピークだった1990年度の約60兆円を超え、29年ぶりに過去最高を更新すると見込んでいることだ。
「なんだ、順調じゃないか」と思ってしまいそうになるが、国債は新規で32兆円発行し、歳出としてこれまでの国債に23兆円返済する予算編成なので、差し引き9兆円も借金総額は増える。財務省によると、19年度末時点の国と地方を合わせた長期債務の残高は、過去最高の1122兆円に達する見通しだという。何だか、数字が大きすぎて麻痺(まひ)してしまい、他人事に感じてしまう。
とは言え、「国家100年の計」を考えると無責任なことも言っていられない。予算が100兆円を突破し、10月には消費税が10%に引き上げられるという国家財政と国民生活にとても重要な節目の年だ。拡大の一途をたどる社会保障費などについて、国民的議論を起こす政策論争が必要ではないかと心配になる。悲しいかな、2月から3月冒頭にかけて展開された衆議院の予算委員会では、予算の歳入・歳出とそれを巡る政策に関する深みのある議論はあまり見当たらなかった。議員を選ぶ有権者の責任も大きい。(博)