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2019年1月24日

中宮伸二郎社労士の「労務の心得」4・時季指定義務と計画的付与

Q 時季指定義務により年次有給休暇(年休)の取得日を定めることができるのであれば、計画的付与は不必要と思われますが、何かメリットはあるのでしょうか。

nakamiya03.png 一斉付与する場合は有効ですが、それ以外にあまりメリットはありません。
 時季指定義務は5日に限定されていますが、計画的付与は本人の自発的取得のために5日を残せばよいとされているため労使協定で5日未満の日数を定めることはもちろん、勤続年数の長い者に対しては5日以上定めることも不可能ではありません。

 計画的付与によるメリットは2つあります。まず、個別に意見を聴かずに画一的取り扱いができることです。時季指定義務による場合は、年休を与えることを当該労働者に明らかにした上で、その時季について当該労働者の意見を聴き、その意見を尊重しなければならないとされているため、会社の指定を拒否された場合、代替日の設定が可能であればこれに応ずることになります。通常、計画的付与は年間スケジュールに基づき設定されますが、突発的な休業への対応としてもつかわれることがあります。突発的な事象に対応する場合は個別の意見聴取より労使協定による計画的付与が便利と思います。

 計画的付与により時季を指定する方法は3種類あります。

  ①一斉付与   例:会社創立記念日などに全員一斉に年休とする
  ②所属別付与  例:派遣先ごとに年休取得日を定める
  ③個別付与   例:各人別に取得日を定める

 ①により職場自体が休業となる場合、年休が付与されていない者への対応が必要になります。年休が付与されていない者は、出勤可能な状態にもかかわらず休まなければならなくなるため休業手当の支払が必要になります。②の場合も同様の問題が生じる可能性があります。③は上半期、下半期など期間を区切ってその期間に本人の希望する日を年休とする取扱いが多くみられ、時季指定義務による取得と大きな違いがありません。

 2つ目のメリットは、①②方式は、各自の雇用契約期間と無関係に年休取得日を定めることができることです。雇用契約期間外に時季指定義務により取得日を定めることはできません。雇用契約期間外に指定するのであれば、その日まで雇用継続する意思があるとみられることになると思います。

 時季指定、計画的付与それぞれの制度を理解した上で5日取得達成のために職場ごとに最適な方法を検討してください。

(中宮 伸二郎/社会保険労務士法人ユアサイド 代表社員)

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