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2018年12月 4日

【書評&時事コラム】『母の教え~10年後の"悩む力"』

「マザコン息子」の高原生活エッセイ

c181204.jpg著者・姜 尚中
集英社新書、定価840円+税

 

 在日韓国人二世の政治学者が綴った「マザコン息子」のエッセイという触れ書きだが、中身は家を首都圏から軽井沢に移し、妻と過ごす現在の「高原生活」がメーン。ゆったりした四季折々の花に囲まれながら、過去を振り返るという構成だ。

 著者のマザコンぶりは自伝小説「母~オモニ」でもよく知られるが、ここでも「無学な母」から生まれ、高名な大学教授にまで上り詰めた著者が、「食」を通じて亡母とのつながりを確認するシーンが数多く登場する。日韓両国を母国に持つ著者にとって、母は文字通り「母国」を象徴する存在のようだ。

 その合間に朝鮮半島の分断、故金大中大統領との交流と尊敬、学生時代の西ドイツ留学などの思い出を散りばめ、東西冷戦の影響が色濃く流れる自身の人生を思い起こす。人並み以上に感受性の鋭い著者だけに、文章にはかなり文学的な匂いも漂う。

 だが、本書ではかつて政治社会を論じた時のような激しさは影をひそめ、高原生活に“隠居”しているような雰囲気が濃い。団塊の世代の一員として、まだまだ隠居は早過ぎるように思うのだが。(俊)

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