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2018年10月30日

【書評&時事コラム】松井エイコさんの壁画

 壁画家の松井エイコさんが東京・銀座の画廊で個展を開催中と聞き、鑑賞に出掛けた。最終日の1日前という、きわどい秋晴れの土曜日。昨年2月に亡くなった母親の絵本作家、まついのりこさんの介護を続けながら、5年ほどの間に制作した作品が中心。

c181030.jpg 北海道・上士別小中学校のモザイクステンドグラス=写真=や士別市ふれあいの道公園のガラスモザイクなどだ。作品の性格上、本物は現地に行って見るしかないが、ギャラリーの写真だけでも「人間」を描く迫力の一端は伝わって来る。すでに全国に150作以上を完成させ、世界的にも知られる存在に。この道40年近いベテランになっても、創作意欲の衰えは感じられない。

 そんな松井さんが壁画家を志したのは、美大卒業直後に東京・原宿の児童書店の壁画を、2年かけて描いたのがきっかけだったという。通常の絵画などとは異なる「壁画の世界」に目覚めた、松井さんにとっては“壁画人生”の原体験だったようだ。若き才能と無限のエネルギーを、生涯込めて注げる世界が見つかった瞬間。単なるアルバイト感覚で壁に向かっていたら、今の松井さんはいなかったかもしれない。

 なにをやろうが自由。どんな仕事に就こうが自由。現代の若者にとって人生の選択肢は無限にあるが、だからといって「天職」がすぐに見つかるわけではない。それでも、今現在、携わっている仕事やさまざまな活動の中に、ピンと来る瞬間が一度や二度は必ずあるものだ。試しに、松井さんの作品の前に立ってみよう。なにか、響き合えるものがあるかもしれない。(俊)

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