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2018年10月 2日

【書評&時事コラム】伊勢湾台風を思い出した

 日本列島を縦断した台風24号は、首都圏にも久しぶりの大風と雨をもたらし、わが家の近くでは街路樹が何本か倒れた。私も前日の夕方からベランダの植木鉢などは室内に移動し、停電になってもいいように懐中電灯やラジオを点検するなど、一応、備えは万全。ついでに、長い夜になりそうだったので、冷蔵庫に缶ビールも何本か冷やしておいた。

c181002.JPG さあ、いつでも来い!と思ったのだが、夜半に風が吹き始めると、かなり怖い。風は一方向から吹くのではなく、さまざまに音や方向を変え、突然の轟音とともにガラス窓を叩きつける。テレビの中継を見ながら、風に耳を澄ましていると、不意にこの風を覚えていることに気づいた。何だったっけ、いつ聞いたんだろう……。

 日付が変わって1日未明になったころ、やっと思い出した。1959年(昭和34年)、今回と同じ時期に来た伊勢湾台風だ。当時、私は新潟県の田舎の小学生だったが、何軒か近所の屋根瓦が飛ばされるなど、かなりの被害を出した。それが昭和史に残る大災害だったことは、後で新聞やラジオで知った。あの時、子供心に感じた不気味な風音が、私の記憶の奥底に残っていたのだろう。

 あのころは雨戸を閉めて、さらに板を打ち付け、停電になると家族でロウソクを囲んだ。外の風と家のきしむ音を聞きながら、ロウソクの揺れる炎が“非日常”を感じさせた。その辺は、今とまったく違う。あれこれ考えるうちに、風はピークアウトし、私も安心して人事不省に。「飲み過ぎよ、何が寝ずの番ですか!」。これは翌朝、妻の第一声。(俊)

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