経団連会長が大学生の採用活動について、現行の一括採用方式を見直す発言をしたことが、大きな話題になっている。面接や内定の解禁日を設けても、ズルい企業の協定破りが横行しているうえ、通年採用で優秀な人材をさらっていく外資系やIT系企業が増えているためとか。
意味のない協定なら、即刻やめちゃえばいい。なぜ、そこまで騒ぎになるのか。関係者に聞くと、企業と大学の双方に“お家の事情”があるようだ。企業にとっては一括採用の方がコスト安で済み、採用後は「社畜」教育を施して定年まで働かせれば、社内人材はうまく回る。大学側にとっては、有名企業に何人就職させたかで親の大学評価が決まり、高い授業料も払ってくれる。企業には事実上の「大学枠」があるから、学生の就活指導がしやすく、どこかに押し込むにも一括採用は好都合だ。
私は、仕事で企業の合同説明会を何度かのぞいたことがあるが、大会場に企業のブースが所狭しに並び、いわゆるリクルートスーツを着込んだ男女学生が“ブース巡り”をする光景は、一種異様な感じだ。いつから、こんなイベントが盛況になったのだろうか。そこでわかるような情報はネットで取れるし、大体、自身が何の職業を志しているか未定の学生にとって、そんな場所に意味があるとも思えない。採用支援企業がもうけているだけではないのか。
終身雇用や年功序列が崩れつつあり、新卒一括採用も時代の遺物になった。学生にとっては、企業の都合に左右されない、職業の選択肢が広がっている。それをチャンスととらえるか、不安に感じるかは、学生自身の未来予想図によるのだろう。人生の先輩として、ひとこと。就職は人生のほんの一部です。(俊)