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2018年3月27日

【書評&時事コラム】『雇用は契約~雰囲気に負けない働き方』

「何となく入社」時代は終わった

c180327.jpg著者・玄田 有史
筑摩選書、定価1600円+税

 

 考えてみると、日本企業には経営者と社員の間に不思議な雰囲気がある。それは、雇用契約に対する無関心だ。入社時の新人は、人事から働き方や処遇などについて「おいおい説明するから」などと言われ、とにかく仕事をおぼえるのが最優先。前もって説明を求めたりすれば、上司や同僚に煙たがられるのがオチだ。

 著者は、それこそが正規と非正規に代表される日本の雇用の特徴であり、大体は働く側に不利になると主張。その根拠について、総務省やリクルートワークス研究所などの調査データを駆使して分析する。その結果、自分の雇用が無期なのか有期なのかさえわからない人が400万人以上もいることには、かなり驚かされる。それだけ、いい加減な雇用関係が横行しているわけだ。

 本書は「『正規』の曖昧」から「契約から考える雇用の未来」までの8章で構成。正規・非正規、無期・有期といった身近な雇用関連用語でありながら、実は曖昧な実態を浮き彫りにしている。労働専門学者の手法は綿密で説得力があり、問題の所在をあぶり出している。文章も理屈っぽくなく、平易で読みやすい。

 同時に、著者は雇用期間を無期と有期、就労時間を一般時間と短時間に分け、それぞれを組み合わせた4パターンに大別して、どのような仕事が向いているかといった前向きな提言も試みた。労働力不足に直面し、人材の有効活用を迫られている日本にとって、貴重な示唆と言える。(俊)

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