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2018年2月13日

【書評&時事コラム】『AI化する銀行』

銀行はIT業になる?

c180213_2.jpg著者・長谷川 貴博
幻冬舎、定価800円+税

 

 日本でも話題沸騰のAI(人工知能)の影響を最も強く受ける業界はどこか。著者によると、それは銀行業界で、いずれ銀行の支店は支店長とマネジャー(ロボット管理者)だけの2人体制になり、接客、融資担当、ATM担当など、それ以外の業務や人員はすべてAIに置き換えられる可能性があるという。
 
 銀行マンにとっては何とも気になる話だが、著者は机上の空論を並べているのではなく、国内外で進行している金融業界のAI浸透を分析しながら、行き着く先を見通しているのだ。米ゴールドマン・サックスで600人のトレーダーがAIに置き換えられた実例などを交えながら、導入が遅れている日本の銀行に警鐘を鳴らしたとみることもできる。
 
 「世界の銀行員たちが震撼」から「求められる能力が変わる」まで4章で構成。全体を通じて著者が分析しているのは、銀行業務の多くはAIに代替可能な業務であり、人間はAIでも代替できない業務に移行することが生き残りの条件というもの。具体的には、ITリテラシーを持ち、ITをベースにしたサービスに特化することだという。
 
 IT、それも金融業界特有の業界用語が多く、一般にはかなりむずかしい内容だが、日本の銀行が貸出金利だけで収益を上げられる時代は過ぎたことは確かだ。本書ではあまり触れていないが、利用者のためになるのであれば、早く「AI化」してほしい。(俊)

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