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2017年10月10日

【書評&時事コラム】『子ども格差の経済学』

こんなに掛かる!子供の教育費

c171010.jpg著者・橘木 俊詔
東洋経済新報社、定価1500円+税



 少子化が進んでいるためか、子供を持つ親の教育熱は年々高まり、今や不気味な水準にまで達している。本書を開いて、それがわかった。東大合格者がダントツに多い進学塾「サピックス」は有名だが、近年はそれを上回る「鉄緑会」なるクローズド型の進学塾まで登場し、東大法学部と医学部を目指す超エリート塾として知られるという。

 本書は、そんな話題を皮切りに、塾通いしている子供としていない子供の格差、習い事の効果、子供に掛かる教育費総額などを詳細に調べたうえで、日本は諸外国に比べて親の負担が大きい事実を明らかにし、親や社会の果たすべき役割などを5章にわたってまとめた。

 日本では、子供の教育についてカネに糸目をつけない親が多いと言われるが、保育園・幼稚園から大学までの教育費、その間のピアノや水泳などさまざまな塾通いに必要な金額など、それらを全部合わせるとかなりの負担となり、富裕家庭と貧困家庭の格差が如実に出て来るリアルも描き出している。

 著者は日本の格差問題の第一人者とあって、子供の教育格差の改善に向けてさまざまな提言もしているが、ここまで開いてしまった格差を縮小するのは容易ではあるまい。教育をどこまで「公共財」とみなして政府が財政支出に踏み切るか、高齢者以上の社会問題であることは間違いない。今から半世紀前、塾通いも習い事もせず、山野で目いっぱい遊んで育った評者にとって、現代の子供を取り巻く環境は別世界に映る。 (俊)

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