がんは「病気」でなく「個性」
著者・樋野 興夫
主婦の友社、定価1100円+税
長寿化の結果だろうか、現代日本人の2人に1人はがんで死んでいる。ここまで広がると、がんはかつての「不治の病」「本人に告知するかどうか」「会社や近所に隠さなければならない病気」といった“恐怖”の対象から、「どうやって死と向き合うか」「いかにしてがんと共存するか」という身近な存在に変化してきた。だが、それらは医学の領域ではなかった。
本書はそんな常識を超えた、著名な医学博士による「がんとの共存法」。2008年に日本で初めて開設した「がん哲学外来」が患者・家族の共感を呼び、多くの医療機関・従事者に影響を与えた。そのエッセンスを1冊にまとめた。
「第1章 『宴』の心をもって暮らしていく」から「第4章 家族、友人としての寄り添い方」に分かれ、エッセイ風のわかりやすい文章が並ぶ。「がんになっても天寿はまっとうできる」「がんは、人それぞれに備わった『個性』」など、従来のがんに対する考えを180度ひっくり返したような、ユニークな発想のオンパレードだ。
がんに限らず、長寿国の人々の人生は病気と共存する人生であり、もはや「完治するまで頑張る」とシャカリキになる必要はないのかもしれない。そんなことより、人生にはもっと大切なことがある。本書には、そんな思いが強くにじみ出ている。(俊)