在宅医療・介護の現実と関係者の苦闘
著者・山岡 淳一郎
ちくま新書、定価820円+税
団塊の世代が後期高齢者の仲間入りする「2025年問題」をめぐり、医療・介護体制に関する議論が活発だ。しかし、財政難もあって、その体制整備は後手後手に回っている。これからの高齢者は安心して歳を取り、死を迎えることができるのか。本書はそんな問題意識から出発している。
全体は「在宅医療の光と影」「亡くなる場所が選べない」「認知症と共に生きる」「誰のための地域包括ケアなのか」「資本に食われる医療」の5章で構成。テーマごとに、その分野の第一線で奮闘努力している医師、看護師、介護士ら、そして終末期を迎えた患者家族や認知症の人々を綿密に取材している。
ベテランノンフィクション作家の筆は鋭く、在宅医療の医師と終末期患者とのやり取りなどは、具体的で読む者の胸に刺さってくる。同時に、国が強力に推進する地域包括ケア制度の課題なども随所に織り込み、超高齢社会を迎える現代日本の実情を浮き彫りにする。
残念なのは、本書の題名。こうした身も蓋もないタイトルは週刊誌と大差ない。読み進めていけば、リポートの多くは、高齢者が「長生きして報われた」と思ってもらえるよう、日々奮闘している医療・介護関係者の姿に割かれており、一種の希望さえ感じさせる。このタイトルを著者が希望したとはどうしても思えない。 (俊)