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2017年4月18日

【書評&時事コラム】大人は信用できない?

 千葉県松戸市でベトナム人の小学3年女子が殺害され、その犯人は日ごろから小学生の登下校を見守っていた保護者会の会長だった。それが本当に事実なら、子供たちを変質者や交通事故から守り、地域の安全を率先して推進してきたはずの人がなぜ?これからは見守ってくれる人も信用してはいけないのか……。子供たちにどう教えればいいか悩む親や教師らの戸惑いが伝わってくる。

c170418_2.bmp 警察官が酒酔い運転をする。消防署員が放火する。教師が女性を盗撮する。医師たちが集団暴行をする。昔は「聖職」と呼ばれていた職業の人たちが、超えてはならない一線を超えている。そうした事件がそう珍しいことでもなくなった気がしてならない。日本人の職業倫理観は高く、汚職などが極端に少ない「清廉な国」というイメージを諸外国に植え付けてきた。それが過去のものになっているのだろうか。

 そうとばかりも言えない。今年2月、島根県益田市で小学生の登校を見守っていた男性が、酒気帯び運転車にはねられそうになった子供を、身をていしてかばって亡くなった。男性自身、かつて下校中の娘を交通事故で亡くし、再発防止を願って続けた見守りだったという。至高な人間の姿と人生の不条理を思わない人はいなかったはずだ。

 この二つの事件、どちらも「見守り」に携わる人々の、ほんの数える程度に過ぎないであろうことは推測できる。そんな極小の“リスク”におびえながら、子供たちは登下校しなければならないのか。子供の成長とともに、心の奥底にどこか大人を信用しない、冷えたまなざしも“成長”するのだろうか。そのリスクの方が怖い気がする。 (俊)

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