「消滅」の危機に立ち向かう人たち
著者・相川 俊英
集英社新書、定価740円+税
言葉だけは美しいが本当に実現できるのか、誰もが本音では首を傾げる代表例が、政府の打ち出した「地方創生」であろう。本書は、そんな素朴な疑問に答えている数少ない現場リポート。故郷を過疎化で消滅させないため、奮闘する人々を生き生きと描いている。
ケーススタディーとして長野県下條村、群馬県南牧村、神奈川県藤野町(現相模原市緑区)の三カ所を取り上げ、どのようにして「消滅」の危機から脱却しようとしているのか、克明にルポ。行政が打ち出す「好事例集」などからはうかがい知れない努力や苦楽を描いている。
三カ所の事例を通して感じられることは、地方創生のカギを握るとされる「カネ」と「ヒト」のうち、成否に決定的な影響を与えるのは「ヒト」だという点だ。それは村長らの指導者でも民間人でも構わない。とにかく、人と人をつなぐコーディネーターの役割を果たす人物がいるかいないかで決まるという。
著者はこのテーマについて20年以上、全国を取材に歩いているジャーナリスト。その著者でも、取り上げた三カ所は「稀有な例だ」と言う。しかし、本書を読み進めるほどに、ある種の「希望」も沸いてくる。それは、どんな地方にも「郷土に人あり」という可能性を示唆しているからであろう。地方創生は、まず「人探し」からだ。 (のり)