反主流派の代表的エコノミストによる「資本主義の先」
著者・水野 和夫、榊原 英資
詩想社新書、定価920円+税
現在の安倍政権を支えている経済学者・エコノミストの主流派は「リフレ派」と呼ばれるマネタリストたちだが、このリフレ派から「ワースト・エコノミスト」の1位(榊原)と2位(水野)にランクされた「反主流派」の代表的エコノミストによる「資本主義終焉論」である。
水野が第1部を「資本主義が今終ろうとしている」と題して、超長期の歴史的視点から、「長い16世紀」が「中世から近代への大転換期」だったと同様に、「長い21世紀」が「資本主義時代から次の時代への大転換期」になるとの自説を簡潔に解説している。
一方、榊原が現在の世界経済と日本経済の状況を「第2部・パラダイム・シフトを迎えた世界経済、日本経済を読む」と題して解説。第3部は「資本主義はどこに向かうのか」をテーマにした2人の対談であり、きわめて興味深い議論が展開されている。
ただ、「その先の世界」については、「成長なんか無理で、デフレがこれからの正常な姿」であるとし、「ゼロ成長の時代にどう適応するか」と言及するだけで、新しい理念やシステムが提示されるわけではない。標題に引き寄せられて読み始めた読者は物足りなさを感ずるかも知れない。
ただ、水野によれば、「『歴史の危機』において、次のシステムが姿、形を表すのに100年から200年かかっている」ため、「数世代かけて変えていくしかない」という。気の長い話だから、試行錯誤的に「次のシステムや理念」を考えて行くしかないのであろう。 (酒)