男性の悩み・苦しみを定点観測した報告書
著者・奥田 祥子
講談社+α新書、定価880円+税
著者は新聞社に入社し、担当した週刊誌での取材をきっかけに男性の晩婚・非婚や更年期障害などをテーマに『男はつらいらしい』(新潮新書)を書き下ろしたフリーのジャーナリスト。本書は前著の続編にあたるが、類似書の少ない「男性問題」を取り上げただけでなく、一人一人の男性について1回限りのインタビューで終わらせることなく、数年から10年の長期間にわたって追跡した「定点観測ルポ」となっている点が最大の特徴だ。
男は通常、自分の苦しみや弱みを語りたがらないものだが、著者自らがリストラや家族介護を経験している独身の中年女性であり、「男の愚痴の聞き役」に徹して本音を引き出すのに成功。著者にしか書けない「男性の悩み・苦しみの報告書」となっている。
本書は5章に分かれ、「男たちは何におびえ、苦しんでいるか」について、ごくありふれた市井の普通の男たちの実例を報告している。具体的には、「結婚がこわい(第1章)、」「育児がこわい(第2章)」「介護がこわい(第3章)」「老いがこわい(第4章)」「仕事がこわい(第5章)」。
「男の悩み・苦しみはこれだけに限らない」と言いたくなる部分もあるが、取り上げた実例が身につまされる男性は多いのではないか。従って、男性だけではなく、一人でも多くの女性にも読んでほしい。特に「男は不可解」と感じている女性は、それぞれの年代に応じて、第1章から順に読んでいけば、「腑に落ちる」事例に必ず出会えるであろう。 (酒)