資本主義のもたらした功績は大きい
著者・原田 泰
日経プレミアシリーズ、定価880円+税
資本主義のもたらした功罪は古くて新しいテーマだが、著者によれば、日本ではなぜか否定論が根強い。これについて、日本を代表するリフレ派エコノミストの著者が展開した資本主義擁護論が本書である。タイトルに「亡霊」と付けたのは、否定論者の指摘する事実の多くが、実は事実に基づかない印象や偏見でしかないことを強調したかったからであろう。
著者によれば、反対論者は「資本主義によって格差、貧困、戦争などがもたらされた」と主張している。しかし、格差や貧困は資本主義以前のそれとは比較にならず、資本主義による経済発展のお陰で絶対的格差や貧困は大きく底上げされた。また、戦争は太古の昔からあり。近代の戦争は資本が生み出したものではなく、軍部を含む時々の国家指導者層の判断が誤った結果、と断定する。
なぜそうなのかは、本書をじっくり読んでもらうしかないが、著者は単に経済学の理論に基づくだけでなく、内外の古典にも広く目を通し、とりわけ太平洋戦争を招いた原因については経済的な観点から詳細な検討を加えており、説得力もある。
わかりやすくするため、記述を単純化していると思われる部分もあるが、歴史的事実を再確認するという意味でも、本書は一読に値しよう。 (のり)