育成システムをリセットするしかない?
著者・豊田 義博
筑摩書房、定価800円+税
世代研究を進める著者はレッテル貼りの無意味さをもちろん了解している。そのうえで、本書では“ごくふつうの若者”を対象に多方面から特徴を分析し、旧世代が支配する組織環境との齟齬を明らかにしている。そこから導かれる課題は「若者の成長のしにくさ」であり、精緻な考察を通して一段と深刻な様相が浮き彫りにされている。
例えば、旧世代組織では、仕事漬けの日々のなかで非合理な試行錯誤を積み上げ、帰納法的に到達する熟練をもって「一人前」と認めるキャリア観が一般的だ。対して、今の若者は、あるべき姿に近づくための明確なプロセスを求め、最短効率の努力をもって演繹的に技能習得を果たそうと考える。あるいは、会社では消極姿勢でも社外勉強会で刺激を受けて成長していく若者もいる。
新旧のギャップの根は深く、もはや上司や人事が小手先で解決できるレベルではないと見て、「個社完結型『採用・育成』システム」をリセットし、「社会協働型『育成・活用』システム」を構築すべきではないかと抜本的な改革を提案している。
(久島豊樹/HRM Magazine より)