「まちづくり」のエキスパートが提言
著者・木下 斉
NHK出版新書、定価740円+税
政府が「地方創生」に向けて「まち・ひと・しごと創生基本方針2015」を発表し、地方活性化に向けた政策を本格化させた。しかし、「地方に仕事を作る」「地方へ人の流れを作る」などのスローガンを見ても、本当に地方創生につながるのか、どこか確信が持てない国民が多いことも否定できまい。本書を読んで、その理由がわかった。地方創生は、そこに住む住民が行政の力を借りず、自ら活動する「収益活動」を実践しなければ成功しないのだ。
著者は、高校時代から東京・早稲田の商店街活性化運動に取り組み、その時の成功と失敗を“元手”に「まちづくり」の専門家になった。「まちづくり」と聞けば、普通は行政主導の多目的広場の建設といった補助金事業が頭に浮かぶが、著者は「補助金は一過性の麻薬」と明快に否定する。
そのエッセンスは、まち全体を一つの会社に見立て、ターゲットの顧客をしぼった商店街の活性化によって、売り上げ増ではなく利益を得ること。その利益で次の新事業に挑戦するサイクルを作り上げること。そのためには、地域の不動産オーナーや飲食店経営者ら、少数のキーマンで無理のない事業から始めることだと提言する。
成功に向けて、「小さく始めよ」「補助金を当てにするな」など「10の鉄則」をわかりやすく並べており、多くの「まちづくり」を成功させてきたエキスパートの“体験的金言”といった内容だ。本書を読むと、行政主導の「まちづくり」がなぜうまく行かないのか、納得できる。目からウロコの1冊。 (のり)