働き方の近未来を読む!
著者・安藤 至大
筑摩書房、定価780円+税
近未来の社会と働き方(変わること・変わらないこと)をかみ砕いて解説した分かりやすさ抜群の雇用問題入門書。レクチャーの内容は当然、労働法の枠組みに沿うものだが、本書はそれ以前の部分(働く意味・原理)にウェイトを置き、かつ深掘りを試みている点でユニークだ。
例えば“働き過ぎて死にそうな人と仕事がなくて死にそうな人が共存する状態”を想定し、そこから「分業」の意味を考えさせる。あるいは“すべての人に出番がある社会”を前提に「比較優位性」の概念を説明する。人材価値と需給の関係では、労働者が仕事を奪い合うのではなく、企業が人材を奪い合う環境のほうが望ましいとし、マクロ経済のあり方にも言及している。一方、今後の構造変化によって、公務員や大企業といった所属による安定は難しくなるとも見通し、読者個人には職場が変わっても収入が途切れない“新しい安定”を模索するよう心構えを諭している。
労使対立に陥りがちな諸テーマを中立的に扱い、生き方のヒントに踏み込むスタンスからは著者の正義感もうかがえる。
(久島豊樹/HRM Magazine より)