「セックスワーク」に追い詰められる女性たちのルポ
著者・鈴木 大介
幻冬舎新書、定価780円+税
著者は「生きる現場を中心とした取材活動を続けるルポライター」である。著者によれば、働く単身女性の3分の1が年収114万円未満。中でも10~20代の女性を特に「貧困女子」と呼ぶが、さらに社会の最底辺でもがき苦しんでいる「最貧困女子」が少なからず存在するという。
彼女たちの大半は「三つの無縁(家族の無縁、地域の無縁、(社会保障)制度の無縁)」と「三つの障害(精神障害、発達障害、知的障害)」から貧困に陥るケースが多く、特にシングルマザーの母子家庭では、母子ともにセックスワーク(売春・性産業)に追い詰められていく残酷な現実があるという。
最近、中国・韓国との比較でナショナリズムをあおるため、日本社会や日本人を礼賛する発言が強まっているが、社会的弱者である「障害者」の女性や少女たちが、家族からも地域からも社会保障制度からも支援を受けられず、制度の存在さえ知らない、あるいは役所に問い合わせても見下した対応を受けるといった例が多い。その結果、セックスワークで日銭を稼ぐしかないという、社会の最底辺で見えない存在になっている社会を誇ることができるのだろうか。
さらに怒りを感ずるのは、このような身動きの取れない「最貧困女子」を囲い込み、「甘い汁」を吸っている連中の存在。著者によれば、彼らは実は「最貧困女子」の第1次的救済者となっている、と言う現実もある。例えば、地方から家出して上京し、渋谷などの路上にたむろしている少女に、とりあえずの食事と寝場所を提供するのは彼らだという。
この問題の根は深く、単純な解決策があるわけでもない。著者も現実的な解決策を持っているわけではないが、「見えにくい痛みを抱えた女性の痛み」を知ってもらいたいために本書を書いた、と述べている。 (酒)