100年の変遷でみる「若者と就職」の関係
著者・難波 功士
祥伝社、定価900円+税
日本の就活問題をほぼ100年史で振り返った圧巻の論考。といっても「社会史」とある通り、映画・週刊誌記事・CM・マンガなどに着目して時代を切り取る柔らかめのスタンスゆえに面白く読める。
小津安二郎監督『大学は出たけれど』(1929年)の時代から“高学歴でも就職難”の社会構造は変わらない連続性を指摘する一方、“黒スーツ”というリクルートファッションは就職氷河期以前には見られなかったと文化的な断絶も解説している。「学業か就職準備か」「指定校制度の功罪」といった課題では戦前からも同じような議論が繰り返され、またオイルショック時に「内定切り」が続出したり、1970年代後半には「大卒使い捨て」の実態が暴かれたり、1980年代初めに「受験料をとる会社」が現れたり、案外、今と同じような現象が起きていたことに驚かされる。
「太陽族」「若大将」「植木等」「ヒッピー・フーテン」「俺たちの旅」「ふぞろいの林檎たち」といった時々の話題とパラレルに就職活動を読み解いていく構成には好奇心が大いに刺激される。
(久島豊樹/HRM Magazine より)