「逆説の日本史」の歴史観が垣間見える
著者・井沢 元彦
悟空出版、定価900円+税
ご存知、「逆説の日本史」シリーズの著者で、会員制メルマガに書いた持論を1冊にまとめたもの。「歴史を疑うこと」から「外交史に見る『隠された真実』」まで6章に及ぶ“井沢史観”を展開している。
日本の政治を動かしてきた怨霊信仰、聖徳太子が日本文化の基礎を作った「和の精神」、日本人が言葉のタブーを無意識に意識している「言霊(ことだま)」信仰など、おなじみの持論がここでも有名史実を交えて登場する。
中でも、歴史には時間という縦の流れがあり、それを横に切り取ってその時代だけを研究する「専門家」の姿勢や、日本史研究に欠かせない歴代天皇陵の発掘を認めない政府の方針を舌鋒鋭く批判するくだりは、いつもながら痛快だ。
そして、有名史実に対しても、教科書などに載っている断片的な事実だけを知ることの危険性を、幕末のペリー来航事件などを例に引いて解説。さらには、戦前軍部の情報操作や現代中国、韓国の対日世論の理不尽さにも触れている。記者クラブ制度に寄りかかる大手メディア、とりわけ従軍慰安婦報道の誤りを認めた朝日新聞への批判も強烈だが、これは著者と朝日との長年に渡る確執があるので、話半分程度。
複雑な現代史を語るには問題を単純化しているキライはあるが、著者がなぜここまで言うかを知りたければ、やはり「逆説」シリーズをじっくり読破してからの方がいいかもしれない。とにかく、面白いから。(のり)