認知症に関する誤解、偏見を正す
著者・東田 勉
講談社現代新書、定価800円+税
著者は主に介護問題や認知症ケアについて活躍中のフリーライター兼編集者で、認知症を知らない医師がいかに多いかを知ってもらうために本書を書いた、という。
著者によれば、最近、認知症患者が急増している理由は、「厚生労働省が、『認知症は脳の病気』『早期受診、早期診断、早期治療が重要』と執拗なキャンペーンを行ってきた結果」であり、「病気扱いされる必要のないお年寄りまでも抗認知症薬や向精神薬などを使った過剰な薬物治療で悲惨な状態に陥っている」と問題点を指摘。従って「厚生労働省は・・・認知症の診断や治療が医者任せでバラバラに行われている現状を見直し、『不必要な認知症患者』をつくらないよう指導しなげればならない」と警告している。
そもそも、「認知症」という言葉が使われるようになったのは、それまでの「痴呆」という言葉が差別的だ、との理由で2004年に厚労省が「痴呆」を「認知症」に言い換える決定をしてからだ、という。それだけだったから、認知症の定義も治療法も医師によってバラバラであり、患者側にも「認知症には治療法がないため、諦めるしかない」「認知症には特効薬があるので、すぐ治る」などの誤解があり、誤った治療を受けて症状を一気に悪化させるケースが増えている、という。
では、どうすればいいのか。それについてもう少し踏み込んだ記述が欲しいが、本書ではそれ以上は立ち入らない。問題点の指摘が鋭いだけに、第2弾、第3弾が欲しい。 (酒)