２１世紀日本で右傾化が進んだ５つのポイント
著者・及川 智洋
祥伝社新書、定価８００円＋税
筆者は元朝日新聞記者であり、「左翼の流れ」から見た日本の近現代史を解説している。
筆者によれば、２１世紀の左翼の衰退＝右傾化のポイントは、①経済の不調②インテリ＝知識層の変化③左翼の目標喪失④資本主義の再起動⑤東アジアの勢力図の変化――である。
それぞれについて解説を加えながら、「２１世紀日本の右傾化はある程度必然性を持った現象」であり、「左翼の退潮傾向はしばらく続く」と予想。さらに、「左翼側が新しい理念を打ち出せない限り、左翼は消滅に近いことになる」とまで述べている。
筆者の言う「新しい理念」がどのようなものか、必ずしも明確ではないが、「旧来型の左翼には不可能で、右翼から理性派が台頭することを待つ形になるのだろうか」と述べ、左翼よりは右翼に期待するような、やや「ねじれた」結論となっている。
元ジャーナリストの書いたものだけに、文章は分かりやすいものの、右翼と左翼に二分して考える発想法自体が旧来のものではないかとの疑念を払拭できない上、５つのポイントもあまりに常識的で、相互の関連性も十分説明しているとは言えないため、説得力に欠ける部分もある。
それでも、２１世紀の日本を考える上での基本的論点は提示されており、「議論の出発点」の教材としては意味がある。特に、「日本の近現代史」を勉強し直したい人には一読の価値がありそうだ。 （酒）
