目からウロコのエグゼンプション導入論
著者・海老原 嗣生
PHP新書、定価820円+税
一見、奇妙なタイトルに見えるが、読み進めるに従い、日本の労働制度・慣行に大きな一石を投じる書であることがわかる。
サブタイトルに「残業代ゼロとセットで考えるエグゼンプション」とある通り、本書は政府が現在導入を進めようとしている「成果型」労働制度について、なぜ導入が必要なのか、導入する場合の課題はなにかを詳細に述べている。
結論から言えば、サラリーマンの前半は日本型、後半は欧米型の働き方をすることで、現代日本の抱える多くの労働問題が解決に向かうと提言している。日本型とは「何でも屋」の正社員の働き方、欧米型とは職務限定の働き方で、両者の“接ぎ木”役となるのがエグゼンプション(例外)だという。
その理由については本書を手に取ってもらえばわかるが、著者はエグゼンプションのスムーズな導入には、政府の規制改革会議が提案した労働時間の上限規制、休暇取得の促進、エグゼンプションを一体に扱う「三位一体の改革」こそが必要だと強調している。
この問題は厚生労働省の労働政策審議会で審議中だが、人件費カットしか頭にない経営者、「過労死法案」と呼んで反対するだけの労働組合、「残業代ゼロ」の報道しかできないマスメディアが三者三様に考えるべき内容を含んでいる。 (のり)